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大人気メールマガジン「平成・進化論。」で
多くの人材に影響を与える挑戦者

有限会社セカンドステージ 代表取締役社長

鮒谷 周史さん

企業勤務時代に始めたメールマガジンで、人のネットワークのすごさを知る。会社倒産で失業者となるが、メールマガジンを中心とするネットワーク型事業をはじめる。試行錯誤の末に独自のビジネスモデルを作り上げ、「平成・進化論。」は30万人の読者を持つ一大メディアに成長した。広告主体のクライアントは1500社を超え、読者とクライアントの双方に関係性を作り上げた。
多くの人に影響を与えるオピニオンリーダーとしても活躍しながら、さらに自分への投資を続け、新たなビジネスを模索する。グローバルを視野に入れた展開で、常に自らのパラダイムチェンジを目指す、進化する経営者に話を聞いた。
Profile
早稲田大学卒業後、リクルートを経てワールドコム日本法人に勤める。しかし米国史上最大規模の倒産劇に巻き込まれ失業。その後メールマガジン「平成・進化論。」を中心としたビジネスを創業し、会社員時代からの年収を数十倍に伸ばす。10社以上の有望ベンチャー企業に出資する投資家としても活躍中。

— 鮒谷さんは若手ビジネスマンに最も読まれているメールマガジン「平成・進化論。」の発行者としてご活躍ですね。どのような事業展開をされているのでしょうか。
私が行っている事業のベースはメールマガジン「平成・進化論。」で、現在約30万人に読まれています。主な読者は20代後半から40歳くらいのゾーンですが、中小企業経営者、独立志向者、大企業社員、士業の方などが中心です。成長意欲や自己実現意欲の高い人が多いと思います。

私のメールマガジンの読者は、時間管理・モチベーション・仕事術などのキーワードに興味がある人が多いようです。マスメディアであるビジネス雑誌の読者や、テレビのビジネス番組視聴者と同じような層なので、そのようなマス対象の広告ビジネスのような展開が可能となっています。

広告のクライアントとしては、人材関連企業、ビジネス書などの出版社、セミナーや教育企画の会社,ファイナンス系、ソフト系などとても多彩な顔ぶれです。これまで累計で取引したクライアントは1500社にも上ります。布団や健康器具などが売れたりもしています。

読者には潜在的にとても多彩な需要があると思っています。そのような多彩な需要に対して、さまざまなマッチングが図りたいですね。読者の多様な需要と、多岐に渡るクライアントの商品・サービスをマッチングしていくことで、ビジネスの領域はまだまだ広がるはずです。
— 確かにそれだけのボリュームの読者とクライアントを持つと、さまざまなマッチングのチャンスが生まれるでしょうね。
クライアントとは商売の取引きということだけでなく、人間関係のネットワークを築くようにしています。そうしてリアルなつながりを持つと、当社のマーケティングのコストはとても低くなるのです。限りなくゼロに近い世界ですね。人間関係があって、かつ効果が出ますので、かなり高い確率でリピートにつながります。

そういった展開の結果、毎号ほぼ広告枠が埋まってしまうという、ありがたい状態であり、当社の収益の基盤になっています。少人数で運営しているため、他のインターネットメディアに比べて、効率のいい経営ができているはずです。しかも私自身がその収益確保に使っている時間は、現状でいうと驚くほど短くすんでいるんです。
— ずいぶんと効率のいい事業のようですね。でもそれはこれまでの努力で、そういったポジションを獲得したからでしょう。その収益はどのような分野に投資するのですか。
社会の変化が激しいので、学び続ける重要性を理解している人が成功するとドラッカーもいっていますが、私自身の自己成長や人間関係作りに投資しています。ビジネスを実行する上で大事なのは、ヘッドワーク、ネットワーク、フットワークの3つだと思います。

ヘッドワークとしては、毎日2冊の本を読んでいます。また興味あるセミナーなども極力行くようにしています。高いものだと一日で60万円なんていうのもありましたし、先日シンガポールのセミナーに行ったときは100万円かかりました。それに比べれば本は安いですよね。年間500冊読んでも75万円くらいですから。
ネットワークに関しては、とにかく時間を投資しています。「この人だ!」と思った人と関係を作るには、その人に対して自分ができることを何でもしようという気持ちで会いに行きます。おかげさまで会いたいと思う人には、ほとんど会えるようになりました。その出会いを活かすのは自分の姿勢と努力だと思います。

セミナーへの出席もネットワーク作りになっています。フットワークに関しては時間的に余裕がないのでやりません(笑)。本当はやるべきだと思うのですが、やはり時間がボトルネックとなってしまいます。1日は24時間しかありませんから、やること、やらないことをはっきりさせなければ。
ー 独自のビジネスモデルを作り上げ、自分自身を高めることに投資するというのは、これまでの企業経営とは明らかに違うやり方になっているかもしれません。フリーランスに近い、すごく自由で何者にも縛られていない経営ですね。
無形の資産をどれだけもてるかが勝負だと考えています。それがスモール・エクセレント・カンパニーの生きる道でしょう。「小よく大を制す」の精神です。私たちのような企業では経営者の頭の中身が、99%事業の行く末を決める。

私のビジネスの柱になっているのは、人の発想に刺激を与えることと、メディアとしてのパワーを持つことです。1番のビジネス資産は影響力、アテンションを獲得することだと思います。今の時代はお金より時間が大切なので、人々の時間を集めることができるアテンションを獲得することは、ビジネス上の大きな強みになります。

そのアテンションを集めるためには、発送の刺激とメディアとしてのパワーが必要となるのです。マーケティングの世界でいわれるAIDMAのうち、A=アテンションが集められなければ始まらないのです。不特定多数ではなく、明確なターゲットに対してアプローチできるのが、当社の価値だと思います。

しかし自分自身は、なるべく既存のビジネスの仕組みから抜け出すことが大事だと思っています。ビジネスオーナーになっても、考える時間を持ち続けなければなりません。自分が離れても事業が回る仕組みが必要です。それにより新たなことに取り組めて、事業が拡大していくのです。
ー 鮒谷さんは自社のビジネス以外にも、出資という形で多くのビジネスに関わっていますね。出資に関してはリターンを目指しているのですか。
ネットワークが広がっていくと、出資して欲しいという話も数多く来るようになり、かれこれ20社近く出資しています。でもリターンを目指すというよりは、宝くじでも買っている感じですね。リターンがなくてもネットワークが広がるというメリットがあります。

新興企業の経営者と関わることで、トップならではの価値ある情報が入ってきます。それによりネットワークが広がることもあれば、自分のビジネスに役立つこともある。そういった価値を考えると、充分なリターンを得ているのではないでしょうか。

今の世の中で価値があるのは、アテンションと情報の獲得です。私がいろいろな方面で歓迎されるのは、ミツバチのようなものではないでしょうか。あちこちから花粉をもらって配りながら、お礼に蜜をもらってくる。よくお礼にいろいろな形での報酬ももらいますし(笑)。
— 事業としても鮒谷さん個人としても、独自のポジションを獲得した感じですね。
ドメインを規定しないことが、ビジネスを拡げるコツではないでしょうか。私もメルマガ発行者とかコンサルタント、講師などと自分を規定してしまったら、きっとここまでの広がりはなかったでしょう。できるだけ抽象的に、高い概念で自分を考えます。「何屋さんですか?」ときかれたら「鮒谷屋さんです」と応えます(笑)。

確かに特殊な例かもしれません。選択と集中、ニッチを狙えということはよくいわれますが、ニッチの中でも特に独自の分野なのでしょうね。競合やライバルというのは、全く思いつきません。

私がやっていることの一つは、受注代行屋ではないでしょうか。マーケティングの知恵を活かして人を集めることができるので、それをベースとした契約が可能になります。手続きなどの業務には手を出さずに、人を集めるところで貢献することで、独自のビジネスを成立させているのです。このリソースを活かした次のビジネスも考え始めています。
— そういったオンリーワンのポジションを獲得して、独自のリソースを持つまではどのような活動をしてきたのでしょうか。
大学を卒業した後に、一時期リクルートで働いていました。そのときに出会った先輩の強い営業力などを見て、そういうところでは勝負できないと感じました。むしろ経営のしくみに興味を感じ、そのことを勉強したのです。リクルートは営業会社かつ企画会社で、そのビジネスの仕組みに強みがありました。
ビジネスの仕組みを調べていくと、中小企業でも驚くほど儲かっている会社が多いことに気付きました。私にとってそれはアートのように感じられましたね。でもその前にサイエンスがあるのです。サイエンスを極めるとアートになるのだなと思いました。

まさに頭脳の時代です。そこにITのレバレッジをかけることでビジネスが成立します。最初はプライベートでメールマガジンを発行していたのですが、たかだか読者数百人の時期でも、すごい情報が入ってきました。そこからいろいろなビジネスが始まるのです。もっとも当時はサラリーマンでしたから、今でこそいえる話ですが(笑)。
— なるほど、最初は副業でのスタートですか(笑)。そのころに今のビジネスのプロトタイプができたのですね。人生いたるところにチャンスありという感じですね。
当時勤めていたのは国際的通信会社ワールドコムでしたが、米国史上に残る倒産で、失業者になってしまいます。そのときに起業家を目指す決意をして、資金や経験がない自分でもできるビジネスを必死で考えました。そこで自分自身に課したのが「ビジネスモデル1000本ノック」です。

毎日30個ずつビジネスモデルをひねり出し、前回までのアイデアと競い合わせて勝ち残りを決めていく、オリジナルな発想法です。これを実行するのはかなりハードでしたが、初めて3ヵ月後にどうしても捨てられないアイデアとして残ったのが、自分の成長の様子をメルマガにして収入を得るというものでした。

最初は小規模でのスタートでしたが、今の原型が見えてきた時です。数百人レベルでも影響が出てきたので、これが数千人、数万人になったらどんなパワーになるだろうと思いました。でもそれを実現するためにはマネタイズ、つまりビジネスとして換金化しなければなりません。

最初は人材紹介とのタイアップを行ないましたが、それによりある程度の収入を得ることができたので助かりました。さらにメールマガジンで取り上げている、ビジネス書などの著者と知り合いが増えたので、読者などを招いて小規模のセミナーや昼食会を行いました。やがては大規模のセミナーを行なうことになり、少し規模感のあるビジネスになっていきました。
— 30万人のボリュームも、最初は一人からのスタートです。失業という逆風もビジネスには追い風になったようで、まさに「人生万事塞翁が馬」ということですね。
その頃にメールマガジンに広告を載せている人がいると知り、真似してみると収入が倍々ゲームで増えていきました。効果は収入だけでなく、情報や人が集まるようになり、そのようなサイクルはスパイラル状に上昇して行ったのです。

その結果として一時期は3社経営していたのですが、1社は営業譲渡しました。それによりいくらかの売却益も得ることができました。ゼロからビジネスを立ち上げて価値を創出すると、とても実入りは大きくなるものですね。

ある知り合いの若手起業家は、自分が立ち上げた会社を2億円で売りました。しかし新興市場株投資で全て失い、また2000万円の出資を集めて、4億円の会社を作り上げたのです。そういう事例を見ていると、チャンスは多いと思います。

ファイナンスもレバレッジの一つです。大前研一氏はビジネスを加速させるのは、見えない大陸である「サイバー空間」、それをマルチプルにする「ファイナンス」、そして国境を越える「ボーダレス」だと語っています。これからはファイナンスとボーダレスを心がけたいと思います。
— ということは、これからの展開はグローバルにいくことになりますね。
日本から世界を見るのではなく、世界の中から日本を見ることが必要だと思います。ワールドワイドに垣根はなくなっているから、リソースの最適化はグローバルに考えたほうがいいですね。でもまだ世界が視野に入っていない経営者も多い。

中国、ベトナム、ドバイなどを見て回ってきましたが、そういった新興国は国も国民も、すごいアグレッシブ。そういう世界を知った上で、日本で何をやるかという思考でいきたいと思います。

最近仲間の若手経営者たちと、在留邦人のネットワークを作り始めました。駐在として海外にいる人ではなく、起業したりして現地に根付いている人たちのネットワークです。JBN(Japanese Business Network)という名前です。

経営やビジネスというアートの世界に酔っていますが、実はまだ、自分の内側から湧き上がるようなものを見つけられていません。世の中には自分の欲するものを追い求める経営者が多く、すばらしいことだと思いますが、私はまだそれが見つかっていません。

企業の価値は売上や利益ではないと思います。でもそれが何かが見つかっていない。今はそれを探しているところです。今やっているビジネスでも、2回くらい大きく浮揚した瞬間がありましたが、また新しく目指すものさえ見つかれば、かなり成長できる自信があります。

いろいろな話を頂くのですが、今はお断りすることが多いですね。いつでも戦う姿勢はあるのですが、まだ相手が現われないといったところです。臨戦態勢のまま時がくるのを待っています(笑)。
— 最後に鮒谷さんにとって挑戦とは。
私にとっての挑戦とは、業績や数字ではなく、自分の能力・うつわ・人格・パラダイムといったものをいかに広げていけるかです。独立前に多くの経営者にお会いしましたが、優れた経営者も多く、その方々を真似するところから始めました。それにより自分の世界観が変わるのを実感して、とても心地よく感じたものです。

どうやらパラダイムが切り替わることにより、自分の持つスキルや能力が伸びていくという連鎖があるようです。最初にパラダイムが切り替わらなければ、そんなに伸びることはない。だからパラダイムを変え続けることが大切だと思います。

一段上らなければ見えない光景があります。そういったものを求め続けていきたい。自分のうつわを広げなければ、事業も会社も成長できません。でもそれは背伸びをすることとは違います。無理して背伸びをするのではなく、着実に成長すること、それが私の挑戦です。
目からウロコ
また新たな時代を担う可能性のある経営者と会うことができた。鮒谷さんは、作り上げたビジネスモデルが斬新というよりも、経営者としてのスタイルが斬新だ。スモールカンパニーでありながら、多くの人に影響力を持つという、レバレッジを効かせたIT時代の経営者像を感じさせる。目指すものを模索中で、まだ現在はさなぎのような状態かもしれない。現状のビジネスを通じて得る収益、ネットワーク、知恵などを活かして、やがては大きなビジネスに挑戦する時が来るはずだ。

Web2.0の世界観が表わすように、個を中心に多くの外部ネットワークとつながるビジネスは、大きな可能性を秘めている。固定的な経営資源を持たずに、キャッシュフロー、人的ネットワーク、ノウハウ、ブランドなどのソフト資産で勝負するビジネススタイルは、外部資源とのつながりで新たな価値を生み出すことができる。鮒谷さんのマッチングモデルや他企業への投資活動は、そのような経営スタイルの実践である。挑戦中のグローバル在留邦人ネットワーク構想もそのモデルだ。そこが新しい時代の経営者像を感じさせる点である。これまでの経営セオリーから行けば、今後の成長発展を目指す上で、人材、システム、設備などの固定的リソースが必要とされるかもしれない。それとも今のスタイルを貫くのか、私としては目の離せない経営者の一人だ。
(原 正紀)

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