目指すは「日本の製造業における人事部」 企業を超えた雇用システムの確立に挑戦する経営者
UTキャリア株式会社 代表取締役会長
加藤 慎一郎さん
24 歳で中学時代の同級生と、製造業向けの派遣会社を設立する。雇用流動化を指向した製造業のニーズに合致し、3年目で売上 17 億円に達する急成長を実現。上場を目指すも、ITバブル崩壊で2年連続赤字となる。半導体業界に事業をシフトして、再度成長路線に乗せ、2003 年にジャスダック上場を成し遂げる。製造現場のアウトソーシングの業態で、一括請負という独自のビジネスモデルを確立。リーマンショック後にさらに業態を拡大し、2012 年に再就職支援のUT キャリアを設立。グループ力を活かし、ものづくり産業を支援する雇用システム創出に挑戦する経営者に、話を聞いた。
Profile
24 歳のときに友人と会社を立ち上げ、空洞化が懸念された製造業の人材支援をビジネスとする。製造請負業として成長を遂げ、不況期を乗り越えて、8年目でジャスダック上場を果たす。さらにグループ経営に乗り出し、人材分野で多様な業態を持つ一大グループに成長。2012 年に UT キャリアを設立、現在に至る。UT ホールディングス株式会社取締役。
事業領域は再就職支援サービス 製造業の請負・派遣から領域を拡大し、幅広くものづくりを支援しています
— 本日は、UT グループの中でも UT キャリア(株)の経営者のお立場からお話をうかがいます。まずは、現状のビジネスについて教えてください。
UT キャリアは、昨年4月に立ち上げた新会社です。リーマンショックから大震災と、マイナス要因が続いた環境下、円高の影響もあって、輸出型産業の苦戦が目立つ状況でした。特に、日本の基幹産業であるものづくり業界が厳しい状況で、40 代以上のホワイトカラーを中心に、メーカー社員が失業していく話がよく聞こえてきました。
UT キャリアは、日本のものづくりを支えてきた UT グループの戦略会社としてスタートしましたが、事業領域としては、再就職支援サービスになります。グループ全体としては、製造立国日本の復活という思いから、製造業に対する請負・派遣の業務を行ってきましたが、領域を拡大し、幅広く日本のものづくりを支援しています。
グループ全体の特徴は、ものづくりを支える雇用インフラ事業であることです。請負会社からスタートしましたが、業界の常識を覆すようなことを数多く行ってきました。その1つが、業界としては先陣を切り、正社員雇用を基本に運営してきたことです。
特に半導体業界においては、製造のアウトソーシングという形態に挑戦し、一括請負のシステムで業界発展に貢献しました。グループ全体で「日本一の請負会社」を目指しており、半導体業界で培ったノウハウを活かし、日本の製造業全体に貢献しています。UTキャリアはその中で、再就職支援会社として、分野を越えて人がいきいきと働ける環境を整備することを目指します。
UT キャリアは、日本のものづくりを支えてきた UT グループの戦略会社としてスタートしましたが、事業領域としては、再就職支援サービスになります。グループ全体としては、製造立国日本の復活という思いから、製造業に対する請負・派遣の業務を行ってきましたが、領域を拡大し、幅広く日本のものづくりを支援しています。
グループ全体の特徴は、ものづくりを支える雇用インフラ事業であることです。請負会社からスタートしましたが、業界の常識を覆すようなことを数多く行ってきました。その1つが、業界としては先陣を切り、正社員雇用を基本に運営してきたことです。
特に半導体業界においては、製造のアウトソーシングという形態に挑戦し、一括請負のシステムで業界発展に貢献しました。グループ全体で「日本一の請負会社」を目指しており、半導体業界で培ったノウハウを活かし、日本の製造業全体に貢献しています。UTキャリアはその中で、再就職支援会社として、分野を越えて人がいきいきと働ける環境を整備することを目指します。
— たしかに電気業界など、これまでの日本の成長を支えてきたものづくり業界の苦戦が目立ちます。加藤さんは、どのようにご覧になりますか。
いまの日本の就業構造は、正社員とパートにくっきりと二分されていますが、このような状況が続くと、安心してものづくりができないと思います。そうした中、派遣・請負の業界はこれまで、雇用のバッファ的に使われていたと思いますが、これはいわば、点としての使われ方です。
これを、点ではなく面でしようという試みが、UT グループが行ってきたことなんです。そのためには、「業界初」に何度も挑戦しなければなりませんでした。それは人材の流出を防ぎ、業界全体の専門性を高めることでもあります。1つの会社が自社だけで社員を囲い込み、環境の変化に対応しながら、国内外の過酷な競争に勝ち抜くことは難しい。それを、外部から支援してきたのです。
たとえば電気メーカー全体を見ると、現状では 40%が非正規雇用の社員となっています。大手と言われる会社でも、正社員のワーカーが少ないケースもよく見られます。
これを、点ではなく面でしようという試みが、UT グループが行ってきたことなんです。そのためには、「業界初」に何度も挑戦しなければなりませんでした。それは人材の流出を防ぎ、業界全体の専門性を高めることでもあります。1つの会社が自社だけで社員を囲い込み、環境の変化に対応しながら、国内外の過酷な競争に勝ち抜くことは難しい。それを、外部から支援してきたのです。
たとえば電気メーカー全体を見ると、現状では 40%が非正規雇用の社員となっています。大手と言われる会社でも、正社員のワーカーが少ないケースもよく見られます。
実は、UT グループが拡大することは、そのような会社から正社員がいなくなることを意味し、一部の保守的な方からは、批判的に見られることもあります。
でも、それは時代のニーズに合致していることで、グローバル競争の時代に企業が生き抜くためには、必要な対策だと思うんです。たとえば、従業員の雇用をすべて請け負ったこともありますが、そのときは、現業社員を300 人規模で受け入れました。それは、失業なく雇用が流動化したということでもあります。そうした役割を果たすのが、UT グループの使命だと思っています。
でも、それは時代のニーズに合致していることで、グローバル競争の時代に企業が生き抜くためには、必要な対策だと思うんです。たとえば、従業員の雇用をすべて請け負ったこともありますが、そのときは、現業社員を300 人規模で受け入れました。それは、失業なく雇用が流動化したということでもあります。そうした役割を果たすのが、UT グループの使命だと思っています。
ー 人材ビジネスの役割は、現状の仕組みの中で個別企業では対応できない雇用対策について、企業の枠を超えた対応を行うことですよね。
UT キャリアの提供するサービスとしては、再就職支援の3本柱が挙げられます。まずは、通常のアウトプレースメントですね。これまでの同業界では、企業からの依頼で再就職を目指す人を受け入れて、就職活動の環境やノウハウを提供し、時には職業紹介を行うものでした。利用者のメリットは、1人で再就職活動をしていると不安や迷いが多いものですが、そのようなときに的確なアドバイスを受けられることです。
2つ目には、グループ外出向が挙げられます。顧客である企業にとっては、希望退職を募集したくてもできない状況もあります。たとえば、試みてはみたものの、人が集まらなかったといったケースです。そうした場合には、会社の体力を超える社員が会社に残ってしまい、下手をすると経営そのものにとって大きな負担となり、危機的状況に陥ってしまいます。
希望退職は、組織にとって劇薬と同じような危険性もはらんでいますので、集まらないからといって、そう何度もできないものです。そこで、クライアント企業と相談し、何とか早期退職を合意できる制度に持っていけないかを模索した結果、出てきた発想がグループ外出向でした。公的機関ではすでに行っているようですが、民間がグループ外出向を行ったのは初めてのことでした。
3つ目の柱が、インハウスソリューションです。これは、ある職場をそのまま業務請負の UT エイムに移し、請負として業務を継続していくものです。UT グループで培ってきたノウハウを活かした新たなサービスと言えますが、グループの請負業務の中に製造現場を持つという、他の人材会社にはない強みがあるからできることです。
2つ目には、グループ外出向が挙げられます。顧客である企業にとっては、希望退職を募集したくてもできない状況もあります。たとえば、試みてはみたものの、人が集まらなかったといったケースです。そうした場合には、会社の体力を超える社員が会社に残ってしまい、下手をすると経営そのものにとって大きな負担となり、危機的状況に陥ってしまいます。
希望退職は、組織にとって劇薬と同じような危険性もはらんでいますので、集まらないからといって、そう何度もできないものです。そこで、クライアント企業と相談し、何とか早期退職を合意できる制度に持っていけないかを模索した結果、出てきた発想がグループ外出向でした。公的機関ではすでに行っているようですが、民間がグループ外出向を行ったのは初めてのことでした。
3つ目の柱が、インハウスソリューションです。これは、ある職場をそのまま業務請負の UT エイムに移し、請負として業務を継続していくものです。UT グループで培ってきたノウハウを活かした新たなサービスと言えますが、グループの請負業務の中に製造現場を持つという、他の人材会社にはない強みがあるからできることです。
全国四〇〇ヵ所の請負現場というインフラを活用 一時的に雇用の避難・流動化ができる仕組みを構築しました
ー ユニークなモデルですね。具体的な例も含め、もう少し詳しく教えていただけます
か。
か。
クライアントとなる企業には、大きく2つのニーズがあります。でもそれは、「雇用を守りたい」、「余剰人員を一時的に出したい」という、相反するニーズです。それだけに、応えるのがなかなか難しい。従来のアウトプレースメント業界で行われていたサービスは基本的に、希望退職などで手を挙げた人へのサービスでした。
再就職のためのファシリティ提供以外のサービスとしては、せいぜい部課長クラスに対して行う、今後の進路を考えさせるセカンドキャリア研修や、キャリアカウンセリングなどです。それに対して当社が行うのは、これまでの事業展開で製造現場での請負業務が全国 400 ヵ所に広がったことから、そのインフラを活用してできるモデルであり、一時的に雇用の避難・流動化ができる仕組みを構築したのです。
企業の置かれている状況に応じて、通常のアウトプレースメントとして希望退職者の就職支援を行ったり、取引先のネットワークを活かした出向としてグループ外の企業に送り込んだり、時にはインハウスソリューションとして部門ごと UT エイムに移したり、といったトータルな対応ができるのです。これは従来にないビジネスモデルですので、引き合いが多くなっています。
産業の盛衰は時代によって移り変わりますが、いまは変革を迫られた電気産業の顧客が多いですね。そのほかにも、消費増税前の駆け込み需要が多かった、住宅産業や自動車産業などとの取引が増えています。派遣による人員補完というケースも、新たな需要になりつつあります。派遣法上、3年間しか契約できませんので、3年経つと人員に穴があくことになり、その穴を一時的にでもつなぐことは、ビジネスチャンスとなり得るのです。
再就職のためのファシリティ提供以外のサービスとしては、せいぜい部課長クラスに対して行う、今後の進路を考えさせるセカンドキャリア研修や、キャリアカウンセリングなどです。それに対して当社が行うのは、これまでの事業展開で製造現場での請負業務が全国 400 ヵ所に広がったことから、そのインフラを活用してできるモデルであり、一時的に雇用の避難・流動化ができる仕組みを構築したのです。
企業の置かれている状況に応じて、通常のアウトプレースメントとして希望退職者の就職支援を行ったり、取引先のネットワークを活かした出向としてグループ外の企業に送り込んだり、時にはインハウスソリューションとして部門ごと UT エイムに移したり、といったトータルな対応ができるのです。これは従来にないビジネスモデルですので、引き合いが多くなっています。
産業の盛衰は時代によって移り変わりますが、いまは変革を迫られた電気産業の顧客が多いですね。そのほかにも、消費増税前の駆け込み需要が多かった、住宅産業や自動車産業などとの取引が増えています。派遣による人員補完というケースも、新たな需要になりつつあります。派遣法上、3年間しか契約できませんので、3年経つと人員に穴があくことになり、その穴を一時的にでもつなぐことは、ビジネスチャンスとなり得るのです。
目指すのは、失業なき雇用の流動化 相談者の強みを企業に売り込むことで、雇用のミスマッチがなくなりました
— そうした他社にない強みを築き上げるまでに、どのような事業展開を行ってきたの
ですか。
ですか。
UT キャリアの業績は売上 12 億円、利益3億円という数字を目指していますが、それも、これまで培ってきたグループの基盤があるからです。しかし、このビジネスには人が絡むため、大変なことも多く、想像していた以上にさまざまなことがありました(笑)。予想以上の対応が必要でしたので、かなり多くのことを学びました。
ほかの仕事では当社を使っていただいていても、再就職支援になると、コンペにされることが多かったですね。受注としては、「企業から取引先として選定されること」になりますが、このビジネスの特徴として、2次受注というものが存在します。企業内で再就職支援に手を挙げる人が、当社のサービスを選ぶかどうかなのです。取引先としては、複数企業が選定されることが多いですからね。
その際、当事業での実績を問われると、どうしても従来から行っている業界大手が目立ちますので、そちらのサービスに行ってしまう。いくら新しくて魅力的なビジネスモデルを提示しても、売上が立つのは、利用者に当社を使う意思表示をしていただいてからです。当初は、そこを安易に考えてしまっていましたね。そこで、当社の強みとして強調したのが、個別相談です。
当社は製造業に強く、事情にも通じていますので、効果的な個別相談を実施できます。他の同業者が行う、いわゆるキャリアカウンセリングは、私たちから見ると“上から目線”です。「必要な支援はするけれど、最後は自分で決めてください」という色の濃い業界だと言えるでしょうね。当社ではカウンセリングという名称に代え、「キャリアコンシェルジュ」というサービスを行っています。
相談者のスケジュールを個別に管理し、合致しそうな求人情報を提供して、場合によっては企業に対して、その方の売り込みまで行うのです。利用者個人こそが顧客と捉えて、カスタマー戦略を実施したのです。
ほかの仕事では当社を使っていただいていても、再就職支援になると、コンペにされることが多かったですね。受注としては、「企業から取引先として選定されること」になりますが、このビジネスの特徴として、2次受注というものが存在します。企業内で再就職支援に手を挙げる人が、当社のサービスを選ぶかどうかなのです。取引先としては、複数企業が選定されることが多いですからね。
その際、当事業での実績を問われると、どうしても従来から行っている業界大手が目立ちますので、そちらのサービスに行ってしまう。いくら新しくて魅力的なビジネスモデルを提示しても、売上が立つのは、利用者に当社を使う意思表示をしていただいてからです。当初は、そこを安易に考えてしまっていましたね。そこで、当社の強みとして強調したのが、個別相談です。
当社は製造業に強く、事情にも通じていますので、効果的な個別相談を実施できます。他の同業者が行う、いわゆるキャリアカウンセリングは、私たちから見ると“上から目線”です。「必要な支援はするけれど、最後は自分で決めてください」という色の濃い業界だと言えるでしょうね。当社ではカウンセリングという名称に代え、「キャリアコンシェルジュ」というサービスを行っています。
相談者のスケジュールを個別に管理し、合致しそうな求人情報を提供して、場合によっては企業に対して、その方の売り込みまで行うのです。利用者個人こそが顧客と捉えて、カスタマー戦略を実施したのです。
そこでは、当社が持つ製造業のネットワークを活かせます。たとえば、生産現場でセル生産方式やジャストインタイムを経験してきた方は、住宅建材や自動車などの他分野でも、その経験を活かせるのです。
その方の強みをしっかりと相手に売り込む営業スタイルをとったところ、利用者が増え、本人も強みを活かせるため、ミスマッチがなくなりました。それこそが当社の目指す、失業なき雇用の流動化です。それができるのは、技能・技術の仕組みを理解しているからであり、だからこそ、その方に合った求人を生み出せるのです。これは、競合他社にはできないことで、社会的にも価値のある活動と自負しています。
その方の強みをしっかりと相手に売り込む営業スタイルをとったところ、利用者が増え、本人も強みを活かせるため、ミスマッチがなくなりました。それこそが当社の目指す、失業なき雇用の流動化です。それができるのは、技能・技術の仕組みを理解しているからであり、だからこそ、その方に合った求人を生み出せるのです。これは、競合他社にはできないことで、社会的にも価値のある活動と自負しています。
— 強みを活かした新事業戦略の展開の見本と言えます。創業は、随分と早かったようですが。
24 歳のときに、中学時代の同級生だったグループ代表の若山陽一氏と2人で、エンジニアの派遣業を起こしたのがスタートです。当時は、日本の基幹産業である製造業が、どんどん中国に工場を移転する、産業空洞化が問題になった時期です。日本の強みである製造業を守りたい、国内に残せるようにしたい、という思いがありました。
しっかりと人材マッチングができるようにと考えたのが、個ではなく、チームでの請負というやり方です。チームでやれば、短期間で効率的に動けますし、チーム力を高めることで、仕事の質が高まります。だから、業界では行われていなかった正社員雇用に挑戦したのですが、7割くらいが正社員という雇用形態でした。
立ち上げた頃の事務所はワンルームマンションで、ゼロからのスタートでした。当時はまだ有限会社の制度があり、資本金 300万円を2人で捻出して始めました。営業・経理・採用・現場のすべてをこなすマルチプレイヤーです(笑)。
1期目は 7,000 万円の売上でしたが、2期目には3億円、3期目には 17 億円と、ステップアップしていきました。目標を立てるのが大事だと考えてきましたが、最初に目標にしたのは、事務員を雇うことです(笑)。次は、有限会社から株式会社に組織変更することを目標にして、1996 年8月に改組し、日本エイム株式会社となりました。その次の目標は、上場です。
転機となったのは、2期目の秋に大手製造業からいただいた取引です。これが当社にとって、ブレイクスルーのきっかけとなりました。この取引が、ほかの会社にも一気に広がり、全国展開のきっかけとなったのです。正社員ですと、固定費が重くのしかからないかとの疑問も生まれると思いますが、年間20%の成長業界にあっては、大規模な不況原因でもない限り、まず問題ないと考えました。設立当初は成長のスピードが速く、キャッシュフローが足りずに黒字倒産しそうなときもあり、親にまで借りに行ったものです。当時は大手銀行に、取引先だった大手製造業の半年サイトの手形を持って行ったのですが、割り引いてもらえませんでした。でも、3期目に黒字になったとき、支店長さんに船の模型を持って挨拶に来ていただいたので、良しとします(笑)。
最初の不況期は、IT バブル崩壊の頃でしたね。2000 年から2期連続で、赤字を計上してしまいます。当時は、伸びを確信していた半導体業界に特化する戦略をとりました。業種を絞り込むことで、スキルを深掘りできて質が高まり、事業の生産性も良くなると考えたのです。
クライアントには高品質のオペレーションを提供でき、個人は給与が上がって付加価値も高まり、当社は事業の安定成長を図れるという、Win-Win-Win の関係を築くことができ、2年後にはジャスダック市場に上場しました。
しっかりと人材マッチングができるようにと考えたのが、個ではなく、チームでの請負というやり方です。チームでやれば、短期間で効率的に動けますし、チーム力を高めることで、仕事の質が高まります。だから、業界では行われていなかった正社員雇用に挑戦したのですが、7割くらいが正社員という雇用形態でした。
立ち上げた頃の事務所はワンルームマンションで、ゼロからのスタートでした。当時はまだ有限会社の制度があり、資本金 300万円を2人で捻出して始めました。営業・経理・採用・現場のすべてをこなすマルチプレイヤーです(笑)。
1期目は 7,000 万円の売上でしたが、2期目には3億円、3期目には 17 億円と、ステップアップしていきました。目標を立てるのが大事だと考えてきましたが、最初に目標にしたのは、事務員を雇うことです(笑)。次は、有限会社から株式会社に組織変更することを目標にして、1996 年8月に改組し、日本エイム株式会社となりました。その次の目標は、上場です。
転機となったのは、2期目の秋に大手製造業からいただいた取引です。これが当社にとって、ブレイクスルーのきっかけとなりました。この取引が、ほかの会社にも一気に広がり、全国展開のきっかけとなったのです。正社員ですと、固定費が重くのしかからないかとの疑問も生まれると思いますが、年間20%の成長業界にあっては、大規模な不況原因でもない限り、まず問題ないと考えました。設立当初は成長のスピードが速く、キャッシュフローが足りずに黒字倒産しそうなときもあり、親にまで借りに行ったものです。当時は大手銀行に、取引先だった大手製造業の半年サイトの手形を持って行ったのですが、割り引いてもらえませんでした。でも、3期目に黒字になったとき、支店長さんに船の模型を持って挨拶に来ていただいたので、良しとします(笑)。
最初の不況期は、IT バブル崩壊の頃でしたね。2000 年から2期連続で、赤字を計上してしまいます。当時は、伸びを確信していた半導体業界に特化する戦略をとりました。業種を絞り込むことで、スキルを深掘りできて質が高まり、事業の生産性も良くなると考えたのです。
クライアントには高品質のオペレーションを提供でき、個人は給与が上がって付加価値も高まり、当社は事業の安定成長を図れるという、Win-Win-Win の関係を築くことができ、2年後にはジャスダック市場に上場しました。
日本の製造業で働く方のキャリアをサポートする役割が 当社の使命だと考えています
— 人材ビジネスは景気連動性が高いので、不況期をどう乗り切るかが事業成長のポイントですね。今後の展開は、どのようにお考えですか。
日本の製造業で働く方のキャリアをサポートする役割が、当社の使命だと考えています。雇用の流動化は、企業の現状を考えると、避けて通れない道でしょう。製造業に特化し、半導体製造の請負ではリーダーとして展開してきたノウハウを、横に広げることを考えています。内需型産業にシフトして、事業ポートフォリオを組み立てるつもりですが、中でも人手が不足している建設業などに注目しています。
建設業は、もう頭打ちなのではないかという見方もありますが、耐震強化、震災復興、高速道路の老朽化保全など、新たなニーズが出てきています。昭和 40 年代の建築物は建て替え時期でもあり、需要は多くなっているのです。
そのほかにも、まだまだニーズを掘り起こせる可能性はあります。たとえば個人住宅のリフォームなどですが、その担い手である大工のなり手は少なくなっている。そこで、大工の雇用を正社員化するなど、当社が製造業で行ってきたことを転用することで、有利に展開できるはずです。派遣から請負へ、非正規から正社員へと、当社のスキームで事業を行えば、新たな事業展開が可能となります。
製造業における人員構成は、ゆくゆくは4層になるのではないでしょうか。正社員、コアの請負、フローの請負、派遣という形態です。そうした将来像も想定しながら、事業展開をしていきたいと思っています。
建設業は、もう頭打ちなのではないかという見方もありますが、耐震強化、震災復興、高速道路の老朽化保全など、新たなニーズが出てきています。昭和 40 年代の建築物は建て替え時期でもあり、需要は多くなっているのです。
そのほかにも、まだまだニーズを掘り起こせる可能性はあります。たとえば個人住宅のリフォームなどですが、その担い手である大工のなり手は少なくなっている。そこで、大工の雇用を正社員化するなど、当社が製造業で行ってきたことを転用することで、有利に展開できるはずです。派遣から請負へ、非正規から正社員へと、当社のスキームで事業を行えば、新たな事業展開が可能となります。
製造業における人員構成は、ゆくゆくは4層になるのではないでしょうか。正社員、コアの請負、フローの請負、派遣という形態です。そうした将来像も想定しながら、事業展開をしていきたいと思っています。
企業の枠を超えて仕事の価値を表す給与テーブルを築きたいそれによって、「日本の製造業における人事部」の役割を果たせる
— 最後に、加藤さんにとっての挑戦とは。
この国の雇用の領域で求められていることに、対応していきたいと思っています。問題だと感じているのが、企業ごとの縦割りの給与体系で、同じ仕事をしていても、企業によって給与がバラバラという現実です。企業の枠を超えた仕事の価値を表せるような給与テーブルを築きたいと思っています。それによって、「日本の製造業における人事部」の役割を果たせるのではないでしょうか。
頑張った人間が報われる社会を、製造業の中で作っていきたい。セーフティネットの役割を果たすとともに、新たな雇用を業界横断的に生み出していくことを目指します。これは、社会が求めていることですので、誰かがやらなければなりません。現状では国もやっていませんので、民間である私たちがやらなくては。それが私たちの挑戦であり、使命でもあると思います。
頑張った人間が報われる社会を、製造業の中で作っていきたい。セーフティネットの役割を果たすとともに、新たな雇用を業界横断的に生み出していくことを目指します。これは、社会が求めていることですので、誰かがやらなければなりません。現状では国もやっていませんので、民間である私たちがやらなくては。それが私たちの挑戦であり、使命でもあると思います。
UTキャリア株式会社 DATA
設立:2012年4月1日、資本金:5,000万円、従業員数:32名、事業内容:各種人事コンサルティング、アウトプレースメント事業、関連会社:UTグループ各社(UTホールディングス、UTエイム、UTアイコム、UTエージェント、UTコンストラクション・ネットワーク、UTリーディング、UTハートフル)
目からウロコ
人材ビジネスという言葉もすっかり定着したが、これほど古くて新しい業界はない。人材派遣、斡旋、研修などのビジネスは高度成長期から見られたが、それ以外の請負やコンサルティングなどは、近年伸びてきたものであり、その代表的企業がUTグループだ。しかし、人材に関するビジネスは、江戸時代にも「人入れ稼業」などとして行われていたサービス業でもある。組織や経済が動くところ、必ず人に関するニーズが生まれる。特に製造業は、固定費の投資が大きく、製造のリードタイムの長さから、市場の環境変化に対応するのが難しく、しばしば大規模なリストラが行われてきた。その被害を受けるのは個人であり、UTグループのような会社が、一企業ではコントロールできない雇用の調整を柔軟に行うことは、企業にとっても個人にとっても大変ありがたいサービスである。
再就職支援という、企業を超えた再配置の中心となる業務を行うUTキャリアは、グループの製造業のネットワーク力や、技術分野へのノウハウを活用し、同業他社にはできないような雇用調整役を目指している。まさに、ものづくり業界における人事部的な役割であり、従来型の再就職支援に加え、在籍出向や自社への受け入れという多様なサービス手法を組み合わせることで、多くの企業やその従業員のニーズに応えることができる。まだ設立2年目の若い会社だが、製造業界における新しい雇用システムの中心となる可能性を秘めている。
(原 正紀)
再就職支援という、企業を超えた再配置の中心となる業務を行うUTキャリアは、グループの製造業のネットワーク力や、技術分野へのノウハウを活用し、同業他社にはできないような雇用調整役を目指している。まさに、ものづくり業界における人事部的な役割であり、従来型の再就職支援に加え、在籍出向や自社への受け入れという多様なサービス手法を組み合わせることで、多くの企業やその従業員のニーズに応えることができる。まだ設立2年目の若い会社だが、製造業界における新しい雇用システムの中心となる可能性を秘めている。
(原 正紀)