7JUN1203

フリーターから一転、経営者へ

エコビジネス界の若きリーダー

株式会社新日本電気サービス 代表取締役社長

都築 博志さん

高校卒業後に入社した会社では、仕事の面白みを感じられずに3年で退社する。その後フリーターとしての生活、たこ焼き屋の開店、俳優を目指してプロダクション入りなどの経験を経るが、家業である家電販売店が数千万の借金を抱えてしまう。その窮状を助けるために家業に参加して、省エネ機器のレンタル営業を開始。試行錯誤の後に軌道に乗り始めるが、同業者の営業方法が問題となり、オール電化製品の販売にシフトして年商28億円のビジネスへと本格的な成長を実現。エコビジネスのリーディングカンパニーを目指すようになる。フリーターからエコビジネスのリーダーへ、発展途上の若き経営者に話を聞いた。

Profile
高校卒業後に入社した会社を3年で退社。フリーターとしてアルバイトで稼ぎながら俳優を目指すが、家業の借金を返済するために経営の道へ。家電販売店から省エネ機器のレンタル、オール電化製品の販売と事業を発展させ成長を実現。現在はエコビジネスのリーディングカンパニーを目指している。

— 著書「24歳・自給750円の私がベンチャー経営で劇的成長できた理由~フリーター社長が3年で年商28億になるまで」を拝読しました。ホームページなどからも本気で世界一のオモシロ会社を目指している様子がよくわかります。どのようなきっかけでそうされたのでしょうか。
高校を卒業してサラリーマンになったのですが、3年くらいで辞めてしまいました。そのときは仕事や会社というものに、とてもつまらないイメージを持っていたのです。しんどくていやだし、私語を話すと怒られるし、ワクワクしないし、会社なんて行きたくないと思っていました。だから遅刻も多かったですね。

辞めた後に父の勧めもあり、たこ焼き屋を始めます。アルバイトをしながらたこ焼き屋で修行をして、その後自分の店をオープンしました。最初は月60万円くらい売れて、これはいいぞと思ったのですが、その後は20~30万くらいに落ち着きます。


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ある日お客さんがいない時に、店でぼんやりとテレビを見ていると、画面の中の芸能人たちが、とても楽しそうに見えたんです。「仕事が楽しい人たちもいるんだなあ」とうらやましく思いました。それがきっかけになったと思います。その影響で一時は俳優を目指すのですけど(笑)。

経営者になると、仕事は楽しくなければならないという気持ちを強く持つようになりました。経営というものは道徳に反せず、社会貢献していれば、何をやっても自由だと思うんです。社員も楽しい場に集まるでしょう。だから日本一、いや世界一面白い会社を目指してやろうと考えたんです。

— 経営にテーマを持つことはプラスのエネルギーにつながりますね。実際にオモシロ企画としてはどのようなことをしているのですか。
例えば「メガネの日」というのがあります。毎年10月1日は全社員が、メガネ着用で出社することにしているんです。伊達メガネでもサングラスでもいいことにしています。この日の朝礼で私が「おい、そこのメガネ!」と呼びかけて、全員が声をそろえて「はいっ!」と応えるのがお約束になっています(笑)。

このアイデアは2005年に実施した「オモシロ企画コンテスト」で、全112の企画の中から金賞に輝いたものです。ちょっとしたアイデアで職場が楽しくなるものですよ。オモシロ企画室という部署をつくり、全社のアイデアを集めたり、企画を実行したりしています。

それから毎年末には「N1グランプリ」というイベントを行います。参加は自由で各チームが演芸を行い、面白かったチームには賞金が与えられるものです。賞金総額はなんと100万円(笑)。他にもその年に一番ジーパンが似合った人に「ベストジーニスト賞」を贈るイベントもあります。

全社員に5000円ずつ支給する「おしゃれ手当」、誕生日をみんなで祝う「バースデーメール」、1日6件の契約が取れたら、その支店全員で会社経費を使い焼肉を食べにいける「肉シックス」なども行っています。

他には全員が3日間の休みを取って海外に行く社員旅行、全社員からの今日の感想メール、本日一番輝いていた人を知らせる「今日の輝き」、スタッフ同士が無記名でお互いの長所を伝え合う「長所アンケート」など、企画は目白押しですね。

今年は「シャメ1グランプリ」という、写メールで写した画像を提出して、一番面白い人に賞金10万円を出すという企画もやってみました。これは当社を受けに来た学生からのアイデアです。学生にオモシロ企画のアイデアを出してもらい、通った人は社長と直接面接できるという「直面」という試みから出たアイデアです。


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ー オモシロ企画を考えることは、仕事する上で重要な企画力や創造力の、いいトレーニングになりそうです。それにしても都築さんはいろいろと紆余曲折を経て経営者になられたようですね。
たこ焼き屋で見たテレビに刺激されて、俳優を目指すことにした時に、オーディションを受けて小さなプロダクションに入りました。チャンバラのケイコや、やくざ映画のけんかのトレーニングなどをしていましたね。それはそれで目的に向かって進む、心地よさがありましたよ。でも先が見えてこないつらさがありました。

そんな時に父親が経営する電気店の商売がうまくいかずに、数千万円の借金を背負ってしまったことが判ります。バイトで月20万円ほどの収入を得ていましたが、それで返せるはずもありません。起死回生で考えた策は、省エネ機器のレンタルでした。ほっておけずに家業を手伝うことにしたのが、この商売に入るきっかけでした。

最初はチラシでもまけば決まるかなと思ったのですが、でも全く反応がなくていろいろ試すことになります。近くのスーパーとタイアップしたり、代理店を募集したり、そんな努力の積み上げの結果、少しは決まるようになりました。

その頃お会いしたある京都の会社の社長から「こういう商品は飛び込み営業のほうが決まりやすいのでは」と聞いて、実際に自分でやってみたところ、結構決まったのです。それで営業を組織したり、代理店を契約したりして、定期的に決められる体制ができました。

ところが省エネ機器が市場に認められ始めた頃、同業者が1台100万近いとんでもない高値で、詐欺まがいの商売をして、マスコミに叩かれて社会問題になってしまいます。うちでは月1000円というローコストでレンタルしていたのですが、それでもキャンセルが相次いで、日々辛抱強く説得して回りました。あの時に諦めずに努力したことが、今の自分につながっていると思います。

ー 軌道に乗るまでは会社も都築さんご自身も、試行錯誤の連続でしたね。「若い頃の苦労は買ってでもしろ」といいますが、まさに苦労によって磨かれたということですね。
省エネ機器では厳しいと考えて、その後はオール電化の製品の扱いを開始します。それを契機に順調に売り上げが伸びてきました。商品が安定してくると、重要なのは営業組織になります。同業者によるダメージから2年ほどの努力を経て、ようやく成長軌道に乗りました。

それまでの飛び込み中心の営業から、テレマーケティングを基本とするようになりました。それは新しい商材を検討していたときに見学した、浄水器の営業会社がヒントになっています。何でも見よう見真似で取り入れてきましたが、いいと思うことをとにかくやってみるという姿勢が、うちの強みですね。

私はフリーターなどの経験を通じて、いろいろな組織の末端に属してきました。現場で働く人たちのうれしいこと、いやなこと、それぞれの思いなどを肌で感じてきました。人望のある人、ない人・・・その時に経験したこと、感じたことが、今の経営に生きています。

— 借金というマイナス状態から、数々の試行錯誤の時期を経て、今ではエコビジネスのリーディングカンパニー、10年後の年商1000億円という目標を掲げましたが、その実現に向けての意気込みをお聞かせください。
1000億という金額にあまり深い意味はありません。どうせなら高い目標を持ってがんばろうという気持ち、そこら辺にある会社で終わりたくないという意思の現れです。創業から10年で1000億円を達成する会社は世界にも少ないそうです。もちろん創業からではないですが、今を原点にそれを目指そうという意気込みです。

「不都合な真実」という映画でも取り上げられていましたが、地球温暖化の問題はとても深刻な状況です。私も以前は、自分の会社とその社員が豊かであればいいと思っていましたが、改めて我々のビジネスが世の中に求められており、役立っていることを認識するようになりました。

まだまだ自社としてもやるべきことは多い。さらに世界規模で解決しなければならない課題にチャレンジしたいと思います。だからエコビジネスに特化して、それ以外はやらない信念を持つようになりました。それがエコビジネスのリーディングカンパニーを目指すということです。今は我々の努力が地球の環境のためになるという、確信を持って進んでいます。

— 新規事業へのチャレンジも盛んですね。
ビジネスをもっと拡大するために、これからはオール電化を中心としたリフォームにも力を入れていきます。さらに不動産事業として、中古物件の再生をおこなうリノベーション事業にも進出します。これも全てエコビジネスの一環です。戸建やマンションに関わらず、多くの物件を手がけていきたいですね。

太陽光電池も手がけています。まだまだこれからの状態で、ようやく契約が入り始めたところですが、これも地球環境を守るために役立つ商品です。これから大きく育てたいと思っています。今後も新たなビジネスモデルを生み出していきたい。ビジネスモデル創造企業こそが、当社の目指している企業モデルなんです。

— これだけの成長を成し遂げてきた大きな要因は、営業システムの見直しだと思います。単なるテレマーケティングの導入ということでなく、社員一人ひとりが全力で取り組めるような、多くの工夫を凝らしていますね。
もともと私が先頭に立って営業していましたが、それでは限界があります。社員全員に力を発揮してもらうためには、しくみを作るしかありません。成長できた要因は、営業やスタッフが長く働いて、成績を上げてもらえるような職場環境や仕事のルール、経営のしくみを作り上げたからでしょう。

飛び込み主体でやっていた時は、すぐ辞めてしまう人が多く、また採用もなかなかできなくて、本当に苦労しました。どうやったらいい人材が採用できるか悩みに悩んで、結局採用テクニックに頼るのではなく、いい人材が来たがる会社にするしかないという結論に達しました。

営業は分業制に変えました。電話でアポイントを取るアポインターと、実際にお客様のところに行くクローザーという2層制にしています。


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アポインターは全てパートの社員ですが、クローザーの社員にも必ずアポインターを経験してもらいます。その大変さを知れば、1回のアポイントをおろそかにせずに、なんとしても契約を採ろうという姿勢につながるからです。

アポインター・クローザーに関わらず、従業員の満足度を高めることを、常に考えています。先ほどのオモシロ企画以外にも、多くのキャンペーンを実施しています。仕事は人生の中でも最も時間を費やすことです。仕事がつまらなければ人生がつまらないということになってしまい、こんな不幸なことはありません。

— 少子化時代を迎えて、人材採用はとても難しくなっていますが、それを成功させるためのポイントは何でしょうか。
価値観の共有が大事だと思っています。最高の営業マンとは、会社の価値観に共鳴できて、なおかつ数字を作ることができる人でしょう。価値観が合わない人は会社の内部分裂の原因となります。中小企業にとって最も採用してはいけないのは、価値観が合わなくて仕事ができる人ですね。

価値観を見極めるには、面接において正解がない質問を投げかけることが効果的です。例えば「あなたが会社を選ぶ基準は何ですか」「あなたが大事にしているものは」「お金と健康ではどちらが大事でしょうか」といった質問で、その人の持つ価値観が見えてきます。

ビジョンを共有してくれて、共に努力してくれる人、それが求める人材です。採用には苦労してきましたので、自分ならどんな会社で働きたいかをとことん考えました。報酬、休暇、オフィス、福利厚生、上司、社長はどうあるべきかなど、考え抜きました。できることとできないことがありますが、できることは全てやるつもりです。

— 信条なども明確にされていますね。「仕事は楽しく・苦しく」や「即断・即決・即実行」など都築さんらしい印象的なフレーズがありました。
個人が存分に力を発揮しながらも、全社の目標に向かって進むためには、価値観の共有が欠かせません。そのために企業理念や会社の信条を明確にすることが重要です。だから経営理念はもとより、信条に関しても25条設定して、当社として大事にしていることを伝えています。

人材についていえば、ここまで成長できた原動力である、アポインターを中心とする女性の活躍も大きいですね。だから女性にとって働きやすい会社であることにも、注力して来ました。女性が本気で働きたいという環境をつくることができたと思っています。

オフィスの環境や福利厚生はもちろん、男性社員の質というのも外せない要素です。男性社員が女性社員の対して丁寧に接する風土が必要です。女性に嫌われたら仕事上困る、そういう雰囲気を作れば男性は紳士的に振舞うものです。特に中小企業では、男性社員をほしがるよりも、女性の採用に集中したほうがいいのではないでしょうか。

— でもオモシロ会社や働きやすい会社をめざすと、勘違いして甘い考えで入ってくる人も増えるのではないでしょうか。
オモシロ会社を目指すためには、厳しい会社であること、自立した人間の集まりということでなえればなりません。自立した人間ということに対しては、これまでの経験から学んだ、自分なりの考えを持っています。例えば楽しく仕事ができる人間であり、会社を優先して考え、仕事で結果を出すことができる人である。

他の要件としては絶対に言い訳をしない、自分の力を信じる、即断即行動などで、その上でナンバーワンを目指すこと。オンリーワンというと耳障りはいいが、視点を変えればナンバーワンをあきらめた人の言い訳に過ぎません。当社は常にナンバーワンを目指したい。勝ち負けにこだわることで、目標を達成できると思います。

— まだまだ前進は続くでしょうが、これからの挑戦についてどうお考えでしょう。
人生そのものが挑戦だと思います。人生には挑戦か妥協かどちらかしかない、といわれたことがあります。どちらかしかないならば挑戦しようと思いました。挑戦することとは、リスクをとることです。リスクという言葉は結構好きですね。食事に行くときも味のわかったお店だけでなく、時には新しい店に入るリスクをとっています(笑)。

歌手のセリーヌ・ディオンが「リスクのないところに喜びは感じられない」と話していました。その言葉は会社の信条にも入れています。フリーターとしてもがいていた時期から、これまでの道のりを振り返ると、リスクをとるエネルギーを成長力として進んできました。私個人だけでなく会社としても常にチャレンジャー集団でありたいと思います。

目からウロコ
フリーター・ニートの増加は大きな社会問題となったが、都築社長も一時期はその一人として試行錯誤を重ねながら働いていた。家業での大借金というマイナスの出来事を契機に、ビジネス経営の道へと足を踏み入れるが、その奮闘努力の後の躍進振りは見事という他はない。家電販売店は量販店の構成で苦戦を強いられており、省エネ機器のレンタルという新市場に勝負をかけて乗り出し、ゼロから一定の成果を挙げるに至る。しかし同業者の強引な商法に社会の批判が集まり、再び苦戦を強いられてしまうが、オール電化製品の販売に新たな活路を見出す。人材採用や定着の問題に苦しむが「社員に満足してもらうには,それにたる会社を作るしかない」という絶対的な結論に至るまでが、とても素直というかスピーディである。多くの経営者がその事実を横目で見ながらも、会社本位の経営を続けていることを考えると「即断・即決・則実行」と信条に掲げている柔軟性・迅速性は、同社の大きな強みといえる。最近、若手経営者と話していると「面白い仕事」「楽しい会社」という話をよく聞く。これまでストイックに苦行のような仕事を続けてきた団塊の世代へのアンチテーゼかもしれない。世界一のオモシロ会社を目指すという都築社長の目標は、今の若者世代の気質を捉えた、最高のモチベート戦略ともいえる。これからこの会社は、どれだけ弾けてくれるだろうか。
(原 正紀)

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